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- 令和8年9月定例会
- 9月2日 本会議 一般質問
- 川合 利也 議員
1 住宅減災3本柱(住宅耐震補強・家具固定・感震ブレーカー設置)の再構築について
平成28年熊本地震、そして、令和6年能登半島地震は、私たちに大きな課題を突きつけた。熊本地震での益城町における木造住宅の倒壊・崩壊、大破の割合は、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の住宅で28.2%(大破を含め45.7%)、新耐震基準のうち平成12年5月31日以前のいわゆるグレーゾーンの住宅で8.7%(大破を含め18.4%)、これは現行の平成12年基準の住宅の2.2%(大破を含め6.0%)に比べ約4倍の水準となった。
能登半島地震では、輪島市・珠洲市・穴水町における同割合は旧耐震基準の住宅で19.4%(大破を含め39.3%)、新耐震基準のうち平成12年5月31日以前のいわゆるグレーゾーン住宅で5.4%(大破を含め16.9%)、これは現行の平成12年基準の0.7%(大破を含め2.0%)に比べ約8倍の水準に達した。なお、今般の令和8年熊本地震での住宅倒壊等の耐震基準別の割合は今後の調査結果を待つことになる。
さらに、全国で耐震診断の依頼のあった2万9,974棟の診断結果を集計した日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査データ(令和7年10月29日発表)では、このグレーゾーン年代の住宅の86.6%が現行の耐震基準を満たさないとの衝撃的な判定集計結果が示された。
これらを受けて、令和8年3月に策定された県の第4期耐震改修促進計画は、新耐震基準の木造建築物のうち平成12年5月以前の建築物について、精密な耐震診断や必要な耐震改修を実施し、安全性確保を目指すことを目標に明記し、当市の第4期耐震改修促進計画でも、新耐震基準(平成12年基準以前)で建てられた木造建築物の安全確認を推奨し、周知・啓発するとした。
ところが、令和8年度から始まった県の「TOUKAI-0+(プラス)」の補助対象は、依然として昭和56年5月以前の旧耐震住宅のままである。計画は新耐震基準(平成12年基準以前)という新方向を示したが、それを実現する補助制度が旧耐震のままに据え置かれている。この計画と制度のギャップを、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率が「60%~90%」とも「20%~50%」とも叫ばれている現況下でいかに埋めていくか、自治体の判断が厳しく問われているものと考えられる。
また、大地震の人的被害は、住宅の倒壊だけでなく、屋内の家具の転倒、そして、電気を原因とする火災という3つの経路で生じる。阪神・淡路大震災では死者の8割以上が家屋倒壊・家具転倒等による圧死であり、屋内負傷者の半数近くは家具の転倒・落下が原因だった。また、火災原因の6割以上は電気に関係するものとされている。
政府の中央防災会議では、令和7年3月の南海トラフ巨大地震の新たな被害想定及び同年12月の首都直下地震の新想定において、感震ブレーカーの設置率が100%になれば、焼失棟数をそれぞれ実に約53%削減、約72%削減できるとの定量評価が発表された。
一方、感震ブレーカー設置補助制度は、県内35市町のうち、当市・袋井市・伊豆の国市のみが未実施であり、県中部では当市のみが未実施という現状である。また、当市では、家具固定支援は高齢者・障害者世帯等に限定されている。
ついては、住宅倒壊を防ぐ耐震補強、屋内事故を防ぐ家具固定、通電火災を防ぐ感震ブレーカー、この3本柱を一体の減災パッケージとして再構築していくことが住宅減災のために強く求められているとの判断のもとに、以下質問する。
(1) 当市の第4期耐震改修促進計画に示された令和5年の耐震化率は93.7%とのことだが、この計算方法を昭和56年5月までの旧耐震基準、平成12年5月までの新耐震基準グレーゾーン、平成12年6月以降の現行耐震基準別の住宅戸数、うち耐震改修済の住宅戸数等を使って明示していただきたい。
(2) 今後の取組が急務と判断されるグレーゾーン年代の木造住宅の戸数をどのように把握しているのか。また、耐震基準年代別の内訳を推計または確定値で把握していたら、その戸数を伺う。
(3) 国の耐震補助対象は建築年ではなく耐震診断の結果で定義されており、グレーゾーン年代であっても補助対象としている。徳島県の全市町村、千葉県習志野市・四街道市、埼玉県川越市では、グレーゾーン年代の住宅まで耐震診断・改修工事補助対象に広げている。当市でも、まずは新耐震グレーゾーン住宅への耐震診断補助から段階的に対象を拡大する考えはないか伺う。
(4) 家具転倒防止事業について、事業開始からの実績、そして、高齢者・障害者世帯等に限定されている現行の枠組みを一般世帯へ拡充する等の考えはないか伺う。
(5) 前述のとおり、県内35市町のうち感震ブレーカー設置補助制度がないのは当市を含め3市のみであり、当市に隣接する藤枝市、焼津市、吉田町、牧之原市、菊川市、掛川市、森町、浜松市、川根本町といった全ての市町が制度を設けている。当市発生の通電火災が隣接市町に燃え広がるといった事態が発生すると、隣接市町の住宅減災対策にも深刻な悪影響を及ぼす懸念もあり、県中部全体の住宅減災政策上極めて深刻な制度空白地帯となってしまっている。市長は令和6年3月6日の定例会において、同僚議員の質問に対し、「過去の地震災害の事例や電力会社の電力復旧の処置に改善がされていることなどの理由により、通電火災のリスクが相当程度小さくなっていると考えられます。」、「感震ブレーカーの補助よりも、住宅の耐震化、耐震シェルターや防災ベッドの設置といった家屋空間安全対策事業を推進していきたい。」と答弁された。その後、国は南海トラフ、首都直下と2つの新想定で、家電や電力復旧の改善を織り込んでもなお感震ブレーカーの設置徹底により焼失棟数を5割から7割削減できると定量的に示し、住宅減災のための最優先課題であると示した。これらの国の最新の評価を踏まえ、令和6年3月の答弁の前提となった認識は今も維持されているのか。そして、設置補助制度を創設する考えはないか伺う。
2 低出生体重児とその母親への切れ目のない支援について
本日、私がこの質問に立つのは、市議会議員として、そして「妻とともに、2人のリトルベビーを育てた1人の父親」として、どうしても看過できない当市の課題を皆様に訴えたいからである。
我が国では現在、約10人に1人の赤ちゃんが2,500グラム未満の低出生体重児として生まれている。この2,500グラム未満の赤ちゃんのことを、親しみを込めてリトルベビーと呼んでいる。
私の上の娘は2,200グラム、そして、下の息子は2か月半の早産で1,216グラムの極低出生体重児としてこの世に生を受けた。
息子の命を繋ぐため、生まれた直後から聖隷浜松病院のNICU(新生児集中治療室)に2か月半入院した。自力で母乳を吸う力がない息子のために、妻は四六時中、実家で搾乳機に向かい、母乳を専用パックに詰めて冷凍保存を続けた。平日は妻が、土日は私が、妻の実家である旧豊岡村から片道約21キロメートル40分、往復1時間20分の道のりを、毎日、聖隷浜松病院のNICUへ母乳を届けるために車を走らせた。
その車中、頭を離れなかったのは、「なぜもっと大きく産んであげられなかったのか」との自責の思いだった。当時、私は大阪市に単身赴任していた。そのために妻が不安感・孤独感を深め、早産となってしまったのではないかと自分を責めていた。妻は私以上に「自分の体が弱かったから」と言って、自責の言葉を口にしていた。このように、予定日より早く小さな子供を産んでしまった母親は、強い自責の念にかられる傾向がある。
さらに、医師からは、心肺機能の未熟さによる呼吸困難・心不全のリスク、酸素濃度による未熟児網膜症のリスク、母子分離による心の健康リスク、RSウイルスの感染症リスク等、命に関わる冷酷な現実を告げられ、心配で夜も眠れない心理状態となっていった。なお、これらのリスクのいくつかは現実にその後、そして、今現在でも厳しい現実となって息子と私たち家族を悩ませ続けている。
息子がNICUに入院時のことだが、隣の保育器に入っていた赤ちゃんが、全身紫色で、アラーム音が鳴りっぱなし、医師と看護師がつきっきりでケアし、それを両親が深刻な顔で見守っているという緊迫した状況を目の当たりにした。「赤ちゃん頑張れ」と念じつつ、翌日行ってみると、隣の保育器は空っぽで、あの赤ちゃんの姿がないことに衝撃を受けた。しかし、赤ちゃんがどうなったのか、現場のスタッフに聞く勇気はなかった。そして、妻にはこの話はしなかった。
妻は、極限の精神状態の中で、「毎日、自分の母乳を絞って届けること」だけが、母親が我が子のためにできる唯一の育児であり、母親としての存在意義を保つ「心の命綱」だったのではないかと思う。
しかし、その命綱を繋ぐための電動搾乳機の購入やレンタル代、使いまわし厳禁の完全無菌の母乳パック代は、病院の治療費ではないため、未熟児養育医療給付制度からも子ども医療費助成制度からも外れた全額自己負担であり、入院が数か月に及べば数万円単位の出費となる。なお、現行の出産育児一時金や妊婦・出産給付金は通常の出産を想定した一律の給付であり、リトルベビーのNICU長期入院という異常事態による高額実費までは想定されていない。
なぜ、私がこの個人的な経験を話すのか。それは、私と妻が味わった往復の車内での自責の念、低出生体重児・未熟児ゆえの命に関わるリスクへの深刻な懸念、極限の精神状態、そして、制度の隙間にある経済的負担を、今まさに当市において、現在進行形で背負っている御家族が存在するからである。
当市には、1,500グラム未満の極・超低出生体重児を受け入れる高度なNICUがない。そのため、御家族は約27キロメートル離れた静岡市の県立こども病院や、約8キロメートル離れた藤枝市立総合病院など、市外の病院へ毎日母乳を届けるために通い続けている。往復のガソリン代・交通費に加え、搾乳関連の実費が重くのしかかってきている。
ところで、静岡県は全国に先駆けて、リトルベビーとその父母のためのしずおかリトルベビーハンドブックを開発した先進県であり、当市でも交付されている。同ハンドブックには、体重2,000グラム未満は記入することができない冷酷な成長曲線がない一方、リトルベビーの母親をケアする言葉に溢れている。しかし、同ハンドブックによる心のケアだけでは埋められない、リアルな経済的負担が現場には厳然として存在している。
この制度の挟間ともいうべき経済的負担に対して、本年4月、鹿児島県日置市で、搾乳機や母乳パックの費用を上限2万円まで助成する全国初の先進的な事業が開始され、近隣の焼津市でも検討が進められているとの情報が入っている。
日置市のこの制度は、経済的な助成に加え、リトルベビーの母親に対する心のケアをより強固にする「あなたの頑張りを市が応援していますよ!負けないで!」との強いメッセージであり、私は、産後うつや孤立から母親の心を救うメンタルケア、ネグレクト・虐待予防の政策的先行投資、切れ目のない伴走型支援ではないかと考える。
ついては、「子育てするなら島田市で」を標榜する当市において、リトルベビーとその母親を誰一人取り残さないため、以下について当局の見解を伺う。
(1) 直近5年間における当市の未熟児養育医療給付制度(出生時体重が2,000グラム以下の子供や呼吸機能などが未熟なまま出生した子供、医師が入院養育を必要と認めた子供等の未熟児が対象)を申請し、対象となった子供の数、また、しずおかリトルベビーハンドブックの交付状況を含めた低出生体重児の母親に対する現在の保健指導体制について伺う。
(2) 当市にはNICUがない。このため、市外の医療機関へ母乳を届けに通い、ガソリン代や交通費に加え、搾乳機や母乳パックの費用が全額自己負担となっている現状が、産後間もない母親に与える影響について、認識を伺う。
(3) 出産育児一時金や医療費助成ではカバーできないこの「制度の隙間」を埋め、産後うつや孤立を防ぐため、母乳搾乳関係の費用を助成するリトルベビー支援事業を創設する考えはないか伺う。
平成28年熊本地震、そして、令和6年能登半島地震は、私たちに大きな課題を突きつけた。熊本地震での益城町における木造住宅の倒壊・崩壊、大破の割合は、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の住宅で28.2%(大破を含め45.7%)、新耐震基準のうち平成12年5月31日以前のいわゆるグレーゾーンの住宅で8.7%(大破を含め18.4%)、これは現行の平成12年基準の住宅の2.2%(大破を含め6.0%)に比べ約4倍の水準となった。
能登半島地震では、輪島市・珠洲市・穴水町における同割合は旧耐震基準の住宅で19.4%(大破を含め39.3%)、新耐震基準のうち平成12年5月31日以前のいわゆるグレーゾーン住宅で5.4%(大破を含め16.9%)、これは現行の平成12年基準の0.7%(大破を含め2.0%)に比べ約8倍の水準に達した。なお、今般の令和8年熊本地震での住宅倒壊等の耐震基準別の割合は今後の調査結果を待つことになる。
さらに、全国で耐震診断の依頼のあった2万9,974棟の診断結果を集計した日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査データ(令和7年10月29日発表)では、このグレーゾーン年代の住宅の86.6%が現行の耐震基準を満たさないとの衝撃的な判定集計結果が示された。
これらを受けて、令和8年3月に策定された県の第4期耐震改修促進計画は、新耐震基準の木造建築物のうち平成12年5月以前の建築物について、精密な耐震診断や必要な耐震改修を実施し、安全性確保を目指すことを目標に明記し、当市の第4期耐震改修促進計画でも、新耐震基準(平成12年基準以前)で建てられた木造建築物の安全確認を推奨し、周知・啓発するとした。
ところが、令和8年度から始まった県の「TOUKAI-0+(プラス)」の補助対象は、依然として昭和56年5月以前の旧耐震住宅のままである。計画は新耐震基準(平成12年基準以前)という新方向を示したが、それを実現する補助制度が旧耐震のままに据え置かれている。この計画と制度のギャップを、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率が「60%~90%」とも「20%~50%」とも叫ばれている現況下でいかに埋めていくか、自治体の判断が厳しく問われているものと考えられる。
また、大地震の人的被害は、住宅の倒壊だけでなく、屋内の家具の転倒、そして、電気を原因とする火災という3つの経路で生じる。阪神・淡路大震災では死者の8割以上が家屋倒壊・家具転倒等による圧死であり、屋内負傷者の半数近くは家具の転倒・落下が原因だった。また、火災原因の6割以上は電気に関係するものとされている。
政府の中央防災会議では、令和7年3月の南海トラフ巨大地震の新たな被害想定及び同年12月の首都直下地震の新想定において、感震ブレーカーの設置率が100%になれば、焼失棟数をそれぞれ実に約53%削減、約72%削減できるとの定量評価が発表された。
一方、感震ブレーカー設置補助制度は、県内35市町のうち、当市・袋井市・伊豆の国市のみが未実施であり、県中部では当市のみが未実施という現状である。また、当市では、家具固定支援は高齢者・障害者世帯等に限定されている。
ついては、住宅倒壊を防ぐ耐震補強、屋内事故を防ぐ家具固定、通電火災を防ぐ感震ブレーカー、この3本柱を一体の減災パッケージとして再構築していくことが住宅減災のために強く求められているとの判断のもとに、以下質問する。
(1) 当市の第4期耐震改修促進計画に示された令和5年の耐震化率は93.7%とのことだが、この計算方法を昭和56年5月までの旧耐震基準、平成12年5月までの新耐震基準グレーゾーン、平成12年6月以降の現行耐震基準別の住宅戸数、うち耐震改修済の住宅戸数等を使って明示していただきたい。
(2) 今後の取組が急務と判断されるグレーゾーン年代の木造住宅の戸数をどのように把握しているのか。また、耐震基準年代別の内訳を推計または確定値で把握していたら、その戸数を伺う。
(3) 国の耐震補助対象は建築年ではなく耐震診断の結果で定義されており、グレーゾーン年代であっても補助対象としている。徳島県の全市町村、千葉県習志野市・四街道市、埼玉県川越市では、グレーゾーン年代の住宅まで耐震診断・改修工事補助対象に広げている。当市でも、まずは新耐震グレーゾーン住宅への耐震診断補助から段階的に対象を拡大する考えはないか伺う。
(4) 家具転倒防止事業について、事業開始からの実績、そして、高齢者・障害者世帯等に限定されている現行の枠組みを一般世帯へ拡充する等の考えはないか伺う。
(5) 前述のとおり、県内35市町のうち感震ブレーカー設置補助制度がないのは当市を含め3市のみであり、当市に隣接する藤枝市、焼津市、吉田町、牧之原市、菊川市、掛川市、森町、浜松市、川根本町といった全ての市町が制度を設けている。当市発生の通電火災が隣接市町に燃え広がるといった事態が発生すると、隣接市町の住宅減災対策にも深刻な悪影響を及ぼす懸念もあり、県中部全体の住宅減災政策上極めて深刻な制度空白地帯となってしまっている。市長は令和6年3月6日の定例会において、同僚議員の質問に対し、「過去の地震災害の事例や電力会社の電力復旧の処置に改善がされていることなどの理由により、通電火災のリスクが相当程度小さくなっていると考えられます。」、「感震ブレーカーの補助よりも、住宅の耐震化、耐震シェルターや防災ベッドの設置といった家屋空間安全対策事業を推進していきたい。」と答弁された。その後、国は南海トラフ、首都直下と2つの新想定で、家電や電力復旧の改善を織り込んでもなお感震ブレーカーの設置徹底により焼失棟数を5割から7割削減できると定量的に示し、住宅減災のための最優先課題であると示した。これらの国の最新の評価を踏まえ、令和6年3月の答弁の前提となった認識は今も維持されているのか。そして、設置補助制度を創設する考えはないか伺う。
2 低出生体重児とその母親への切れ目のない支援について
本日、私がこの質問に立つのは、市議会議員として、そして「妻とともに、2人のリトルベビーを育てた1人の父親」として、どうしても看過できない当市の課題を皆様に訴えたいからである。
我が国では現在、約10人に1人の赤ちゃんが2,500グラム未満の低出生体重児として生まれている。この2,500グラム未満の赤ちゃんのことを、親しみを込めてリトルベビーと呼んでいる。
私の上の娘は2,200グラム、そして、下の息子は2か月半の早産で1,216グラムの極低出生体重児としてこの世に生を受けた。
息子の命を繋ぐため、生まれた直後から聖隷浜松病院のNICU(新生児集中治療室)に2か月半入院した。自力で母乳を吸う力がない息子のために、妻は四六時中、実家で搾乳機に向かい、母乳を専用パックに詰めて冷凍保存を続けた。平日は妻が、土日は私が、妻の実家である旧豊岡村から片道約21キロメートル40分、往復1時間20分の道のりを、毎日、聖隷浜松病院のNICUへ母乳を届けるために車を走らせた。
その車中、頭を離れなかったのは、「なぜもっと大きく産んであげられなかったのか」との自責の思いだった。当時、私は大阪市に単身赴任していた。そのために妻が不安感・孤独感を深め、早産となってしまったのではないかと自分を責めていた。妻は私以上に「自分の体が弱かったから」と言って、自責の言葉を口にしていた。このように、予定日より早く小さな子供を産んでしまった母親は、強い自責の念にかられる傾向がある。
さらに、医師からは、心肺機能の未熟さによる呼吸困難・心不全のリスク、酸素濃度による未熟児網膜症のリスク、母子分離による心の健康リスク、RSウイルスの感染症リスク等、命に関わる冷酷な現実を告げられ、心配で夜も眠れない心理状態となっていった。なお、これらのリスクのいくつかは現実にその後、そして、今現在でも厳しい現実となって息子と私たち家族を悩ませ続けている。
息子がNICUに入院時のことだが、隣の保育器に入っていた赤ちゃんが、全身紫色で、アラーム音が鳴りっぱなし、医師と看護師がつきっきりでケアし、それを両親が深刻な顔で見守っているという緊迫した状況を目の当たりにした。「赤ちゃん頑張れ」と念じつつ、翌日行ってみると、隣の保育器は空っぽで、あの赤ちゃんの姿がないことに衝撃を受けた。しかし、赤ちゃんがどうなったのか、現場のスタッフに聞く勇気はなかった。そして、妻にはこの話はしなかった。
妻は、極限の精神状態の中で、「毎日、自分の母乳を絞って届けること」だけが、母親が我が子のためにできる唯一の育児であり、母親としての存在意義を保つ「心の命綱」だったのではないかと思う。
しかし、その命綱を繋ぐための電動搾乳機の購入やレンタル代、使いまわし厳禁の完全無菌の母乳パック代は、病院の治療費ではないため、未熟児養育医療給付制度からも子ども医療費助成制度からも外れた全額自己負担であり、入院が数か月に及べば数万円単位の出費となる。なお、現行の出産育児一時金や妊婦・出産給付金は通常の出産を想定した一律の給付であり、リトルベビーのNICU長期入院という異常事態による高額実費までは想定されていない。
なぜ、私がこの個人的な経験を話すのか。それは、私と妻が味わった往復の車内での自責の念、低出生体重児・未熟児ゆえの命に関わるリスクへの深刻な懸念、極限の精神状態、そして、制度の隙間にある経済的負担を、今まさに当市において、現在進行形で背負っている御家族が存在するからである。
当市には、1,500グラム未満の極・超低出生体重児を受け入れる高度なNICUがない。そのため、御家族は約27キロメートル離れた静岡市の県立こども病院や、約8キロメートル離れた藤枝市立総合病院など、市外の病院へ毎日母乳を届けるために通い続けている。往復のガソリン代・交通費に加え、搾乳関連の実費が重くのしかかってきている。
ところで、静岡県は全国に先駆けて、リトルベビーとその父母のためのしずおかリトルベビーハンドブックを開発した先進県であり、当市でも交付されている。同ハンドブックには、体重2,000グラム未満は記入することができない冷酷な成長曲線がない一方、リトルベビーの母親をケアする言葉に溢れている。しかし、同ハンドブックによる心のケアだけでは埋められない、リアルな経済的負担が現場には厳然として存在している。
この制度の挟間ともいうべき経済的負担に対して、本年4月、鹿児島県日置市で、搾乳機や母乳パックの費用を上限2万円まで助成する全国初の先進的な事業が開始され、近隣の焼津市でも検討が進められているとの情報が入っている。
日置市のこの制度は、経済的な助成に加え、リトルベビーの母親に対する心のケアをより強固にする「あなたの頑張りを市が応援していますよ!負けないで!」との強いメッセージであり、私は、産後うつや孤立から母親の心を救うメンタルケア、ネグレクト・虐待予防の政策的先行投資、切れ目のない伴走型支援ではないかと考える。
ついては、「子育てするなら島田市で」を標榜する当市において、リトルベビーとその母親を誰一人取り残さないため、以下について当局の見解を伺う。
(1) 直近5年間における当市の未熟児養育医療給付制度(出生時体重が2,000グラム以下の子供や呼吸機能などが未熟なまま出生した子供、医師が入院養育を必要と認めた子供等の未熟児が対象)を申請し、対象となった子供の数、また、しずおかリトルベビーハンドブックの交付状況を含めた低出生体重児の母親に対する現在の保健指導体制について伺う。
(2) 当市にはNICUがない。このため、市外の医療機関へ母乳を届けに通い、ガソリン代や交通費に加え、搾乳機や母乳パックの費用が全額自己負担となっている現状が、産後間もない母親に与える影響について、認識を伺う。
(3) 出産育児一時金や医療費助成ではカバーできないこの「制度の隙間」を埋め、産後うつや孤立を防ぐため、母乳搾乳関係の費用を助成するリトルベビー支援事業を創設する考えはないか伺う。

